東京愁情乱行記

怠けることに一生懸命

「徳島~東京 自転車の旅」3月12日

ここ数日の間、とくに太宰府あたりから、ただ目的地に着くために自転車を漕ぐだけで1日が終わっていたような気がする。道中、特に観光するようなところもなく(正確に言えば、この極度に疲労した状態でも寄ろうと思える場所が無かった)少し退屈に感じなくもないが、飛行機はすでに予約していたから、何がなんでも15日には鹿児島に着く必要があった。

この日、自転車で旅をしている人にしか伝わらないであろうことに1つ気が付いた。距離の感覚というのは、気持ちによって相当に変化するということだ。いや、距離というよりは時間と言った方が正しいかもしれない。残り70kmのうちの20kmを走るのと、残り20kmの20kmを走るのとでは、まったく感覚が違うのである。前者は「気付いたら終わっている」というような、要するに非常に楽に感じるわけだが、後者は逆に「いつになっても終わらない」という感覚がある。ゴールを意識し始めた途端にゴールが遠ざかってしまうような、不思議な感覚なのだ。残り20kmを走っているときには、1時間が2時間にも3時間にも感じられる。なかなか減らない数字は、精神的に相当我々を疲れさせるものなのだ。だから、なるべく距離はあまり意識しないで走る方が賢明である。

さて、山鹿ポパイを出た我々は熊本城へ向かった。この日はなかなかのナイスランであったと思う。それは、山鹿と熊本を結ぶサイクリングロードのおかげだろう。ところどころ道が分かりにくかったり、キャリアーごと荷物が吹っ飛んだりもしたが、風も無く、概ね順調に進むことが出来た。やはり、車の横を走らないで済むのはうれしい。全国にもっとこのような長距離のサイクリングロードが出来れば良いのに、と思う。

熊本城に到着したが、やはり疲労もあってか、そこまでの感動も無く、1時間ほどで熊本城を後にした。ここで、同じように鹿児島を目指していると思われる5人組に遭遇し、彼らとは後に日奈久温泉で再会することになる。

熊本城を出た後、友人の自転車に空気を入れる為「川島サイクル」にお世話になった。店主は最初は何となく上から目線で頼りない印象を受けたが、話してみると案外いい人であると判明した。なんでも、6年前にママチャリで180km11時間で漕いだことがあるのだとか。6年前の話をいまだにするんかい、と思わなくもなかったが、見たところかなりの高齢だし、素直にすごいなと感心した。

その後、我々は八代に向かった。八代ではカラオケ「コロッケクラブ」に宿泊した。20時から翌日10時まで居座って2000円という破格の安値であった。